居住用賃貸と事業用賃貸(事務所)の違い~契約のポイントを徹底解説~
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
不動産を貸す・借りるとき、一見同じ「賃貸借契約」でも、居住用と事業用(事務所・店舗など)では契約内容や法律の適用範囲が大きく異なります。
●借地借家法の保護範囲は?
●法人同士の契約では商法が優先される?
●契約書の内容はどこまで有効?
●公序良俗に反する契約はどうなる?
こうした疑問は、オーナー・不動産業者だけでなく、実際に物件を借りる法人や個人事業主の方にも大切なポイントです。
そこで今回は「居住用賃貸契約と事業用賃貸契約の違い」について、法律面・実務面から解説します。
1. 居住用賃貸と事業用賃貸の大きな違い
1-1. 借地借家法の保護範囲
居住用賃貸
生活の基盤となる住まいのため、借地借家法が強く借主を保護します。
例えば、普通賃貸借契約では正当事由がない限り貸主は更新拒絶や解約をできません(定期借家契約を除く)。
敷金や更新料、原状回復なども、消費者保護やガイドラインに従った運用が基本です。
事業用賃貸
事業目的で利用する物件の場合、借地借家法は適用されるものの、居住用ほどの強い保護はされません。
更新拒絶や契約解除の規定も、当事者間の合意(特約)である程度自由に設定できます。
実際には定期建物賃貸借(定期借家契約)がよく用いられ、契約期間満了時に確実に契約を終了できる形を採ることも多いです。
1-2. 法人契約における商法の視点
法人対法人
法人同士の契約は、単純な消費者保護の対象外となり、商取引として見なされる場合があります。
賃貸借契約自体は民法や借地借家法の適用がベースですが、損害賠償の範囲や時効など一部で商法の規定が優先される場合があるため、注意が必要です。
消費者契約法の対象外になりやすい
事業者(法人または個人事業主)が借主になる場合、消費者契約法による保護は通常適用されません。
結果として、契約書の内容がそのまま優先されるケースが多く、特約の重要性が増す傾向にあります。
1-3. 契約書・特約が果たす役割
居住用
借地借家法や消費者契約法の強行規定があるため、「契約書に書いたから絶対に有効」とはいかず、法律で定められた強行規定に反する特約は無効となります。
事業用
借主保護の規定が居住用ほど厳しくないため、契約書に盛り込まれた特約が大きく効力を持ちます。
例えば、更新拒絶の条件や契約解除要件、内装・設備の取り扱い、事業内容変更の際の承諾義務など、詳細に取り決めることができます。
2. 居住用と事業用で異なる契約条項の例
2-1. 契約期間・更新の扱い
居住用
普通賃貸借契約では2年が一般的。
契約期間満了後も基本的に自動更新で、貸主側は正当事由がなければ更新拒絶できません。
定期借家契約にした場合でも、契約時の書面交付や説明など法的手続きが必要です。
事業用
定期建物賃貸借契約(定期借家契約)にすることで、期間満了時に契約を終了することが可能。
契約更新を行う場合も、特約で更新料や更新手続きの方法を細かく定められます。
短期での契約を望む場合や契約終了を確実にしたい場合、事業用契約では比較的柔軟に設定しやすいです。
2-2. 敷金・保証金の額や償却
居住用
地域相場として家賃の1〜3ヶ月分程度の敷金が一般的。
退去時の原状回復は経年劣化を除いた範囲で借主が負担するのが原則で、国交省ガイドラインなども参照されます。
事業用
保証金や敷金が高額になるケースが多く、償却(退去時に一部返還しない)の慣習が根付いている地域もあります。
内装や設備への影響が大きい場合(例:飲食店など)はとくに、物件によって条件が千差万別です。
2-3. 用途制限・業種制限
居住用
原則として住居用。
副業やSOHO的な利用でも、「住居兼事務所」として程度が軽微な場合に限って認められるケースがある。
マンション管理規約や周辺住民との兼ね合いも重要。
事業用(事務所・店舗)
来客の有無や騒音・振動・臭気などの影響が大きい業種は制限をかける場合が多い。
看板設置や広告の出し方も、事前承諾制や禁止条項を設けることが一般的。
また、区分所有マンションの場合は管理規約・用途制限との整合をしっかり確認しないと後でトラブルになる可能性があります。
2-4. 事業内容変更・法人登記の取扱い
居住用
本来は居住目的のため、法人登記や大幅な事業内容の変更はNGの場合が多い。
あくまで住居用と割り切っている場合が一般的。
事業用
法人登記を認めるかどうか、事業内容変更の際に貸主・管理会社へ承諾を得る必要があるかどうかを、特約で定めるケースが多い。
特に許認可が必要な業種(不動産業や警備業など)は、取得後の書類提出義務を契約書で明文化することも重要です。
2-5. 契約違反・解除の対応
居住用
借地借家法上、貸主からの解除はよほどの重大違反や正当事由がなければ難しい。
滞納や迷惑行為などがあっても、段階を踏んだ対応が必要になる。
事業用
契約で定めれば、違反時の即時解除や損害賠償に関する条項を設けやすい。
重量物禁止や業種制限、騒音・臭い対策などを破った場合、迅速に契約解除できるようにしておくことでトラブルを最小限に抑えやすくなります。
3. 法人対法人契約では何が変わる?
3-1. 商法が優先されるケース
不動産の賃貸借は一般的には民法と借地借家法が主体ですが、当事者双方が法人の場合、「商行為」とみなされる場面もあります。
たとえば損害賠償の範囲や遅延利息の扱いで商法が参照されるケースがあり、民法より高い利率が適用される可能性も。
もっとも、当事者が合意した契約書の内容が最優先となることが多く、実務的には「契約書の特約をどう作るか」がカギです。
3-2. 消費者契約法の保護の対象外
法人(事業者)間の契約には、通常の消費者契約法は適用されません。
結果として、オーナー(貸主)と借主(法人)の力関係によって契約内容が大きく変わりうるのです。
●借主企業が強大な交渉力を持っている場合
→オーナー側が不利な契約書になることも。
●オーナー側が強い場合
→借主側に厳しい特約が設定されるケースも。
そのため、契約前の交渉と合意内容の書面化が非常に重要になります。
4. 公序良俗に反する契約は無効
契約自由の原則があるとはいえ、公序良俗(公共の秩序や善良の風俗)に反する内容は法律上無効になります。
いくら当事者間が合意しても、暴力団の事務所として貸し出すような契約は認められませんし、違法行為を目的とする契約は当然無効です。
●反社会的勢力排除条項
近年は不動産賃貸でも「暴力団排除条項」等を盛り込み、契約後に相手が反社会的勢力と判明したら解除できる規定を設けるのが一般的です。
●人道上・差別的観点から問題ある条項
たとえば特定の人種・国籍を理由とする差別的な条項は公序良俗に反すると判断される可能性があります。
5. 実務における注意点
5-1. 入念な契約書作成と重要事項説明
①契約書への詳細な特約の記載
居住用・事業用どちらの場合でも、将来想定されるトラブル(用途変更、営業時間、騒音、重量物の搬入など)に備えた特約を明文化しておくことが大切です。
②重要事項説明書での明示
賃貸不動産の媒介(仲介)では、重要事項説明の段階で物件の用途や制限、特約を丁寧に説明し、借主からの同意を得ます。
ここで曖昧な点があると、後々「聞いていない」「知らなかった」といった紛争に発展することも。
5-2. 許認可が必要な業種への対応
警備業や飲食業など、営業を始める前に許認可が必要な業種は、
「許認可が下りなくてもオーナーや管理会社は責任を負わない」
旨を契約書で明確化するのがおすすめです。
さらに、許認可取得後の認可書類をオーナーまたは管理会社に提出させる特約を入れることで、営業実態をしっかり把握できます。
5-3. 契約違反が発覚したら
事業用賃貸契約では、違反時の是正勧告からの流れ(一定期間内に改善しなければ解除可能)などを具体的に定めておくとスムーズです。
居住用の場合でも、騒音や家賃滞納等のトラブルに備えて、連絡手段や期間を明文化しておくと後々の紛争を回避しやすくなります。
5-4. 税金・費用面の違い
●居住用賃貸は非課税扱い(消費税)
個人の居住用賃料は消費税がかかりません。
●事業用賃貸には消費税が課税される場合あり
法人や個人事業主が事務所として借りる場合、家賃に消費税が加算されるケースがあります(店舗や事務所を個人名義で借りても、実態が事業利用なら課税対象となる場合あり)。
6. まとめ
居住用賃貸は、生活の基盤という性質上、借地借家法や消費者保護の観点から借主が強く保護されます。
契約更新や原状回復のルールも詳しく定められており、オーナーが一方的に厳しい特約を設定するのは難しい場合が多いです。
事業用賃貸は、事業主体に合わせて契約内容を柔軟に決められる一方、消費者契約法のような保護が薄いケースが多いため、トラブルを防ぐには契約書の特約が非常に重要になります。
オーナー・管理会社にとって守りたい点(重量物の禁止、騒音対策、反社会的勢力の排除など)は明確に記載し、違反時の対応フローも定めておくことが大切です。
管理規約や建物の用途制限、消防法や建築基準法の制限など、物件ごとの法令チェックも怠らないようにしなければなりません。
不動産に関するご相談がある方や、賃貸物件をお探しの方、そして賃貸不動産管理でお困りの方や、不動産相続でお困りの方も、お気軽にワンダーランドにご相談ください。
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